Vintage baby boxcalf from Grison Annonay France | Calzoleria Meccariello
革のストックを調べてたら、すっかり忘れていたアノネイのGrison®(ベビーボックスカーフ)が数枚見つかって、ビックリしました。とてもとても小さい革で、とても肌理が細かく、素晴らしい手触りです。スタンプから、恐らく50年代後半から60年代と思います。
この品質の革はもう手に入りません。肌理がとても細かく詰まってて、薄いのにとても丈夫です。革が薄いおかげで木型のラインが完全に表現できるので、美しくエレガントな靴になるでしょう。
The original box calf | Calzoleria Meccariello
ピボディも見つかりました。20年くらい前の革になります。革質が素晴らしく、繊維が詰まっており、小さい革です。この大きさと質の革を手に入れるのは、最近ではほぼ不可能です。
・・・ここ数年米国では畜牛数が5%減っていますが、牛肉生産量はざっくり変わっていません。干ばつの影響が多少あったにもかかわらず、新しい肥育ホルモン剤のおかげで牛肉生産量を維持しています。新しい肥育ホルモン剤によって原皮は厚くなるのですが、繊維の発達が未熟になる可能性があります。特に、ショルダーとベリーは最後に発達して、厚くなるところなのです。・・・Surcharge letter 2013/2/10 | Hermann Oak Leather
米国、カナダ、オーストラリアでは成長促進、繁殖治療目的のいずれについても一定の処方に基づく天然型及び合成型のホルモン剤の使用が認められています。このようなホルモン剤の使用に伴う畜産物の安全性を確保するため、合成型のホルモン剤については残留基準値が設定されているものがあり、また、天然型ホルモン剤については天然に存在する量から一定量の増加の範囲内となるよう使用基準(適正使用規範)が設けられています。・・・
1988年、欧州共同体(EC)は、成長促進を目的としてホルモン作用を有する物質を牛に使用することを EC 指令により禁止し、併せて、1989年、これらを使用した牛肉及び牛肉製品の輸入も禁止しました。この措置は、米国及びカナダとの間で長期間にわたる貿易紛争となっています。その過程で、欧州連合(EU)の獣医公衆衛生に関する科学委員会(SCVPH)は 1999年、2000年及び2002年にリスク評価を実施し、2003年、EU はホルモン物質の使用及び輸入禁止に関する指令を改正し、17β-エストラジオールを永続的に使用禁止とし、その他のホルモン物質について、さらなる科学的情報が提供されるまで暫定的に使用禁止としています。・・・
我が国においては、1960年代から去勢牛の肥育促進等を効能・効果とする天然型のホルモン剤が動物用医薬品として承認され使用されていましたが、1998年には製造・輸入が中止され、1999年には動物用医薬品業者が自主的に承認の取り下げを行っています。
現在、我が国で承認されているホルモン剤は、家畜の繁殖障害の治療や、人工授精時期の調節などの目的に使用されるもののみで、注射剤等として投与されています。
- デュプイ アニロウカーフ 200デシ
- アノネイ ボカルーカーフ 250デシ
《革》デュプイとアノネイの販売 | レザークラフト・フェニックス
- ニッピ タンドカーフ 70~90デシ
- ニッピ ヴィエリカーフ 60~70デシ
《革》デッドストックのカーフを発見!!、《革》ニッピのデッドストックレザー再び! | レザークラフト・フェニックス
- フロイデンベルグ ボックスカーフ 147デシ
- ワインハイマー ボックスカーフ 159デシ
- フロイデンベルグ キップ 半裁 130デシ
- カールロッシュ カーフ 72デシ
「できあがりへの期待では、今回のビスポークは一生ものとなるベーシックな靴を作りたいというこだわりから始まっているので、本当にずっと履けるローファーができあがってくるとうれしいなと。今回は、黒のボックスカーフ(生後18カ月までの仔牛の皮で、とても柔らかいのが特徴)で作りますが、レザーもいろんな種類があるのでほかの素材や色でも作ってみたいと思います」と中田さん。
パリのビスポークアトリエで“トライオン”(2) | OPENERS
カーフスキン(Calf Skin)
生後6ヶ月くらいの仔牛の皮。薄手で繊維組織が緻密でキメ細かく、美しさ抜群。重さ9.5~15ポンドのものをヘビーカーフ、9.5ポンド以下のものをライトカーフと呼び、大きさはライトカーフは90デシ(1デシは10cm平方角)、ヘビーカーフは130デシくらいです。キップスキン(Kip Skin)
生後6ヶ月から2年くらいの中牛皮。厚みも加わり、カーフに次いでキメ細かく、豊かな美しさをしています。大きさは、150~200デシくらいです。
カーフスキン
銀面層(乳頭層)の割合は月齢に関わらず全厚の約1/6ですが、革の厚みと繊維束の太さは月齢によって変わり、成長するほど厚く太くなります。
生後1ヶ月のカーフスキン(上の写真)は約1ミリ厚で、50~70デシです。真皮層では細かい繊維束が中角度で緻密に交絡しています。
生後6ヶ月のカーフスキンは約1.3ミリ厚で、100デシです。真皮層では太めの繊維束がやや高角度で交絡しています。
十分成長した生後12ヶ月のカーフスキンは約3ミリ厚で、270デシです。この時期の繊維構造は、成牛の繊維構造に酷似しています。
生後1ヶ月のカーフスキンは、ほんの1ミリ厚にもかかわらず、細かい繊維束が緻密に交絡しているおかげで丈夫です。また、肌理が極めて細かいので、靴、ハンドバッグ、装丁、ケースに理想的な革です。ただし、繊維が詰まっているため、ドレープが必要な衣料には向きません。
<参考>
みきさんより、大変面白い話を教えて頂きました。
Q. 寒い地域の方が原皮の質が良い(繊維密度が高い)と言われますが、ヨーロッパは米国より良かったですか?
A. お客様の好みによります。
一般的に、寒い地方の牛のほうが、皮は分厚くなりがちで、繊維密度も高くなります。勿論、牛の品種にもよりますが。ただし、ヨーロッパでは雄牛が去勢されずに育てられる事が多い為、シワが高くて毛穴も大きく、革も固くなりがちです。成人男性と、女性ホルモンを注射しているオカマさんとの違いみたいなものです。日本のお客様がそれを好まれれば良いのですが、決してそうとも限りません。
アルプス周辺の牛は、我々が一般的に使っている牛とは全く異なり、誰が鞣しても上等な革になるんじゃ無いかって位、産地や品種によって原皮の性格は異なります。とは言え、生産数に限りが有るため、手に入れることも難しく、より便利で中性的な米国産に偏っています。
Q. 薬品で毛穴を縮めることってできます? 例えば、今は発ガン性があるから禁止になった薬品とかで。これ↓、昔のサンプルと現在のオーダー品なのですが、明らかに昔の方が毛穴が小さいんですよね。薬品でないなら、牛の月齢の違いでしょうか?
Foster & Son/Henry Maxwell: Official Affiliate Thread | Style Forum
A. 特にこの薬品を使えば毛穴が小さくなるといった物は有りません。Aという薬品よりもBという薬品の方が銀面が平滑になるような気がする、とか、Cという薬品の方が毛穴が開きやすいような気がする、とか言うのは有ります。只、革作りにおいて、ある部分で優れている薬品は、違う部分で劣っていることも多く、例えば、面積が出にくいであるとかシワになりやすいとかいった事のバランスを取りながら、処方を決めてゆきます。
さて、写真の靴に使われている革についてですが、茶色い靴2足に使われている革は、非常にシンプルかつ効果的な処方が用いられた革に見えます。その代わりに、恐らく靴にする上において、裁断の取り都合が悪く、また釣り込み等の靴にする作業に熟練の技術を要する難しい革に見受けられます。一方、黒い靴に用いられている革ですが、そもそも牛の大きさが異なるのに加えて、より上手で効率的で今風な処方で作られている様に見えます。つまり、靴にする際に、楽で裁断の効率も良く、特別な技術もそれほど必要とせず、手に入りやすく価格もほどほど。
ただ、これには、茶色の靴に用いられている革が手に入りにくい事も有るでしょうし、コスト的な事も有るでしょう。いずれにせよ、革作りは20℃前後が最適で、牛も涼しい所の原皮の方が品質も良いのですが、残念ながら、それは一般的に先進国にあたる地域なため、今後革の生産や牛の数が減少する傾向にある地域です。所謂発展途上国と呼ばれる地域においては、今後も革産業や牛の生産は活発に行われるでしょうが、それは大体において暑い地域であるため、品質に期待はし難いでしょう。
従って、全体的な傾向としては、高級な革については、今が一番品質も良く価格も安く、今後は品質も下がり続け価格も上がると思われます。
1枚から1足分(のバンプ)しか取らない、というAD。バルモラルブーツのバンプの型紙の模様。
3 Comments:
熟成について
一般的に世間的に、ヌメ革等で最近良く聞く熟成あるいはエージングという言葉ですが、我々から見れば赤ワインをデカンタして、さっきと比べて風味が変わったと言っているのと同じような感じを受けます。
そもそものワインの熟成は、瓶の中で暗くて涼しい所で進むモノの筈なのですが。
革にも同じ事が起こりまして、革になってから空気や光に触れずに何年何十年と経った革は、まさに熟成が進んで完成直後に比べて素晴らしい品質になることが多いです。
つまり、今現在つまらない革でも、大事に熟成すれば、もしかしたら何十年後かには素晴らしい革に変身するかも知れません。
時間も薬なのですから。
ただ、現在のモノ作りでは、なかなかそんな時間に余裕を持たせて貰えないため、熟成不充分な革が多いと感じます。
鍛冶さんの革講座ですか?
どうでしょうねえ。
天然物は天然物で酸化防止を考えないといけませんしねえ。
合成物よりは乾燥し難いものも有るでしょうから、そういう意味では長持ちするかも知れませんね。数十年単位ではよく分からないです。むしろ、保存状態に左右される事の方が多いもので。
革に加える薬品は、料理で言うところの調味料と同じだと考えています。従って、どの調味料が優れていると言う話ではなく、どんな味付けにしたいかで調味料は選ばれるべきです。
熟成に必要な物は、タンニン剤と油脂との適切な組み合わせだと思っています。
と言うのも、純粋にクロムのみで鞣して、他の鞣剤が入らずに油のみ加えられた革の場合、時間の経過による変化は少ないように思いますから。
ところで、CONSERVATION OF LEATHER AND RELATED MATERIALSはお読みになりましたか?
いい本なんですが、面倒臭くて放ったらかしで、、
��鍛冶さんの革講座ですか?
そうです。
��ところで、CONSERVATION OF LEATHER AND RELATED MATERIALSはお読みになりましたか?
サドルソープの歴史を検索してたときに出くわしたのですが、読んだのは3章だけです。改めて見ましたところ、熟成とは真逆ですが、5章でタンニン革の経年劣化を扱っていますね。大英図書館とウェールズ国立図書館で保管していた、1935年にタンニン革で装丁した本を実験に使ったそうですが、なかなか壮大なプロジェクトですねー。
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