2013/01/14

革底の耐磨耗性

1/14/2013
磨耗試験

皮革物性 | 日本皮革研究所


 こういう試験機↑が無く、試験方法がまだ決まっていなかった頃の実験。
Popular Science 1930年6月

Postmen Used To Test Tanning Process | Popular Science 1930年6月



Postmen Test Leather's Durability

Postmen Test Leather's Durability | Providence County Times 1930年4月25日

 郵便配達員が靴を酷使するということは衆目の認めるところであり、異なった方法で鞣された革底の磨耗特性を調べる実験のために、米国農務省の化学者はワシントンの郵便配達員に実験用の靴を履くよう頼んだ。

 革の鞣しでは、タンニン鞣しとクロム鞣しの2つがよく知られている。近年、それぞれの良いところを合わせ持つ混合鞣しがされるようになってきた。クロムリタンドレザーと呼ばれているものだ。実際の磨耗特性のデータを得るために、片足にはタンニン鞣しの革でハーフソールされた靴を、もう片足には混合鞣しの革でハーフソールされた靴を郵便配達員に履かせた。

 実験の結果によると、混合鞣しの革はタンニン鞣しの革より長持ちし、最大でほぼ2倍長持ちすることが分かった。しかしながら、混合鞣しの革には欠点があることも分かった。混合鞣しの革は、タンニン鞣しの革よりも、水の吸収速度が極めて速いため、濡れた足場では滑ってしまうのだ。また、クロムレザーのタンニンによる再鞣しの度合いを強くすると、水を吸収しやすいという好ましくない特徴は改善されるが、長持ちするという磨耗特性は改悪されることも分かった。


※ 詳しくは、The wearing quality and other properties of vegetable-tanned and of chrome-retanned sole leather (1930年1月) | U.S. Department of Agriculture

 上掲と同じく、クロムの割合が高いほど(タンニンによる再鞣しの度合いが低いほど)、ソールが長持ちした、という別チームの実験結果。
耐磨耗性の比較
タンニンレザーソール 1
重度に再鞣しされたクロムリタンレザーソール 1.22
中度に再鞣しされたクロムリタンレザーソール 1.48
軽度に再鞣しされたクロムリタンレザーソール 1.75
クロムレザーソール 1.77

Comparative wear of chrome-tanned, vegetable-tanned, and retanned sole leather (1935年10月) | U.S. Department of Commerce






Combination Tanned. Leather tanned by two or more tanning agents, e.g., chrome, followed by vegetable (Chrome retan); vegetable, followed by chrome (Semichrome); formaldehyde, followed by oil (Combination oil).

Dictionary of terms used in the hides, skins, and leather trade | U.S. Department of Agriculture

混合なめし 2種類以上の鞣し剤で鞣された革。例えば、クロムの後にタンニン(クロムリタン)、タンニンの後にクロム(セミクロム)、ホルムアルデヒドの後にオイル(コンビネーションオイル)。


 アッパー、ソールとも、3重鞣しがセールスポイントだった Wolverine。
 混合鞣しの革底って、もう見ないですね。
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Only WOLVERINE Work Shoes Have Genuine Triple-Tanned Shell Horsehide | eBay

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Wolverine's Exclusive SHELL CORDOVAN HORSEHIDE SOLES Give You Slipper Flexibility ... Twice The Wear of Ordinary Leathers! | eBay






<追記 2014/3/23>

 Clayton は TanFlex を現在も生産しているものの、スコッチグレインでは2005年頃にディスコン。
tanflex

靴の「底」について深く考えてみる その1 | All About

・・・これまでで「私の足と相性がイイ!」と最も思わせてくれたレザーソールは、今から約20年前、1990年代初めに購入したSCOTCH GRAINの靴に付いていた、イギリス・クレイトン(Clayton)製のオイルソールです。このブランドの当時の上級グレードについていたソールで、「曲がる・しなる」の感覚が自らの歩き癖と見事に一致してしまっただけでなく、浸み込ませている成分の影響なのか雨天時に履いても全くスリップを起こさないのです。レンデンバッハやバーカーのものも確かに非常に素晴らしいのですが、私にレザーソールの履きやすさ、そして楽しさを一番素直に教えてくれたのは、間違いなくこれです。

・・・因みにこのクレイトン社、前頁でちょっとだけ触れた「コンビ鞣しのレザーソール」を製造している数少ないメーカーで、現在では鞄好きが憧れるブライドルレザーの製造元の一つでもあります。このオイルソールに限らず、近年はこのタンナー製のレザーソール自体が我が国には殆ど入って来ていないようですが、どこかの靴メーカーでまた使ってくれないかなぁ……


tanflex

 TanFlex は従来のタンニン鞣しのソールより水に強く、柔らかく、4倍長持ちする(当社比)、とのこと。
TanFlex is a full chromed and vegetable retanned leather that is water resistant, softer than traditional outsole leather and has a wearing life of approximately 4 times longer than a traditional outsole leather.

Footwear | Joseph Clayton & Sons


01 wattest1 水に15分間漬けた後の吸水率の比較。
従来のタンニン鞣しのソールは20%強に対し、TanFlex は5%強。

02 gra2 一旦乾かし、また水に15分間漬けた後の吸水率の比較。
従来のタンニン鞣しのソールは3度目には50%ほどになったのに対し、TanFlex は繰り返してもほぼ変わらず。

03 waterup 水に4時間漬けた後の吸水率の比較。
TanFlex は15%未満。

04 drying 1時間~10時間乾燥後の吸水率の比較。

05 water1 銀面から肉面に浸水する時間の比較。
従来のタンニン鞣しのソールは繰り返すほど早く浸水したのに対し、TanFlex は繰り返してもほぼ変わらなく、6時間経っても浸水しない。

TanFlex | Joseph Clayton & Sons

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