2015/07/16

米国の原皮事情

7/16/2015
 みきさんより情報提供頂きました。

 さて、その原皮価格も、先月あたりから状況が変わってきております。
 元々原皮相場は、圧倒的な購買量の中国によって左右されるのですが、どうも契約残の引取を渋り始めた様で。
 去年の10月頃には110ドルまで上昇していた物も、今週は60ドル台まで下がっているなど、先行きは不透明です。
 只、上海株式の乱高下は、中国公安の言うところの「先物取引による不正な相場操縦で株式市場の急落」だけでは無さそうな気がします。

ヨーロッパの原皮事情


 Horweenが買っていて、一番上質とされるHeavy native steersの価格。7月分のデータはまだ反映されていませんが、リーマンショック時は別にして、暴落中ですねえ。値上げしたタンナー、卸、小売店は、半年後くらいには値下げするでしょうか?
Hides Monthly Price - US cents per Pound

Hides - Monthly Price (2010年6月~2015年6月の過去5年分)

Hides   Monthly Price

Hides - Monthly Price (1985年6月~2015年6月の過去30年分)


 ところで、上のグラフの縦軸は US cents per Pound(0.01USドル/0.45kg)で、意味が分からなかったのですが、下のグラフと見比べるに、どうやら USドル/枚 と読み替えても良いようです。
heavynativesteers

Don Ohsman’s view from the US | Leather International


 多少関係あるのかなー?と、思い出した記事。左側はオーストラリアのラムスキンの価格、右側はニュージーランドのラムスキンの中国への輸出額のグラフ。2014年の話です。

Sheep Farmers Take Hit as Demand for Hides Falls (2015年1月11日) | Wall Street Journal

Australia and New Zealand

 中国のタンナーは特にロシアからのラム革製品の需要低下に直面しており、また、中国政府が化学薬品をたくさん使う工場を厳しく取り締まっていることもあって、オーストラリアとニュージーランドの畜産家はラムスキンを売るのに苦労している。

 オーストラリアではラムスキンの価格が85%近く下がった。ニュージーランドの羊の畜産家にも直撃しており、最大で40%下がっている。

 中国政府は、空気、土、水の質を政府に訴える中流階級が急に増え、プレッシャーの高まりを感じており、2014年5月、汚染の元になっていると思われるタンナー等の工場を規制し始めた。特に小規模の工場を対象にした。

-以下超要約-

 河北省辛集市にあるタンナーの経営者によると、中国のタンナーが不景気なのは、主要取引先であるロシアのルーブル暴落、ウクライナ問題での米欧によるロシア製品輸入禁止措置、中国の住宅市場の失速(レザー家具の需要減)によるとのこと。また、彼の概算だが、景気後退の2割くらいは環境基準強化によるものだろう、と。彼の会社は廃水浄化設備に242万ドル使ったのだが、規制強化によって小規模のタンナーは廃業するほかなく、最終的に彼のような大企業が得すると踏んでいるから。小規模のタンナーは規制の監視の目をかいくぐって、廃水処理のルールを破っていたが、「もうできないだろう」と。・・・

 河南省にあるタンナーの経営者によると、ロシアからの需要減によって、2014年のラムスキンの売上は50~60%減ったとのこと。・・・

 中国の景気後退の影響がニュージーランドとオーストラリアにまで伝わっている。・・・中国はシープ・ラムスキンの最大輸入国であり、世界中に輸出された全てのシープ・ラムスキンの約74%を輸入している。・・・

 中国政府は新しい環境ガイドラインを満たさないと見られる工場を広く一掃する一環として、タンナーの取り締まりを突然始めた。ニュージーランドの肉処理工場の経営者によると、小規模同士のタンナーが合併することで、取り締まりの対象から逃れている場合もある、と。・・・

 辛集市にあったタンナーのとある経営者は、「率直に言って、本当に環境汚染をやっていた」と。彼は8年間小さいタンナーを経営していたが、需要低下と厳しくなった環境規制のために、2014年始めに廃業し、他省に引っ越して、レストランを開いた。


 中国共産党の2015年のテーマは、1に国防、2に反腐敗、3に環境、だそうで。

全人代記者会見(1) 国防予算の増幅は約10%に (2015年3月5日) | 人民日報

全人代記者会見(2) 根治を可能とする反腐敗制度建設へ (2015年3月5日) | 人民日報

全人代記者会見(3) 新たな環境保護法、汚染には「ゼロ容認」 (2015年3月5日) | 人民日報

・・・中国は超高速で工業化を成し遂げると同時に、超高速で環境資源を食いつぶしてきた。環境問題はすでに、人々の最大の関心事となり、党中央と国務院もこれを非常に重視している。全国人民代表大会常務委員会は4回の審議を通じて、新たな環境保護法を打ち出した。この環境保護法は「史上最も厳しい環境保護法」と呼ばれ、汚染の「ゼロ容認」の方針を取る、厳格な懲罰措置を持った法律である。
 例えば違法企業に対しては日数計算で罰を加えたり、閉鎖や差し押さえの措置を取ったりすることができる。さらに生産の制限や停止、行政拘留を命じたり、監督管理に落ち度があった行政職員の責任を追及したりすることもできる。・・・


史上最厳格の中国「新環境保護法」 来年1月1日に施行 (2014年4月25日) | 人民日報

・・・高氏はまた、「新環境保護法では、政府責任が強化されて『監督管理』レベルにまで拡大された。汚染対策事業の実績も、地方公務員の評価指標の一つに組み入れられる。つまり、政府の責任範囲が、全面的かつ多元的で奥行きの深いものとなった」と指摘した。
 このほか、新環境保護法には、環境保護普及活動の強化、環境保護に対する国民の意識向上、告発者の保護、環境公益訴訟の主体範囲の拡大、などの内容が新たに加わった。・・・

中国建国史上最悪の環境汚染――環境保護大臣、厳罰を表明 (遠藤誉) (2015年3月9日) | 個人 - Yahoo!ニュース

◆環境汚染の元凶は賄賂(わいろ)という腐敗
 なぜ中国の環境汚染がここまでひどくなったかというと、その元凶は党幹部の腐敗にある。
 たとえばある工場の設置申請の場合をとってみよう。
 企業側は、工場設置に当たり「営業許可証」なるものをもらわなければならない。これまでは営業許可を下ろす際には、必ず既定の「環境基準」を満たしていなければならなかった。
 ところが環境基準を満たして工場を設置するには膨大なコストがかかる。設置した後の環境保護のためにかかるコストも尋常ではない。
 そこで、賄賂がものを言う。・・・
 しかも許認可には何段階もあるので、その段階を踏むごとに賄賂を渡さなければならないから、環境保護のためのコストとほぼ変わらないと思うが、環境保護のためには、設備に対する初期投資だけでなく、それを維持するための費用が掛かるので利潤が少なくなるため、やはり賄賂を渡してしまった方が早い。その後も何かと便宜を図ってくれる。
 ここに巨大な腐敗の温床があり、それが改革開放後30数年間も続いてきたので、中国は歴史上最悪の、「もうこのままでは誰も生きていけない」程度まで環境が悪化してしまった。
 そこで、中国政府は、この許認可制度を撤廃して、環境保護部に処罰権を与え、反則した企業やその責任者には厳しい処罰を与えることにしたのである。・・・

・・・2月23日付の本コラム「第二の中央が習近平を窮地に――公安閥が残した終わりなき災禍」でも書いたように、何と言っても司法や公安、検察が関係党幹部と癒着しマフィア化していたような地方政府において、法の執行がどこまで実行できるのか、少々疑問だ。
 一党支配体制という根本的構造改革を行わない限り、腐敗を撲滅できるような真の構造改革はできないのではないかと懸念する。
 それでも新常態(ニューノーマル)化により、「経済成長の量から質への転換」を図り、GDP成長率を7%にまで落としてでも、環境保護に対するコストをかけさせる決意だけは本気のようだ。
 そうしなければ、一党支配体制も崩壊してしまうのだから。その「待ったなし」の緊迫感が、この記者会見からは見えてくる。

0 Comments: