- ヨーロッパで製造された靴用甲革の性状 (1) (PDF)
- ヨーロッパで製造された靴用甲革の性状 (2) (PDF)
試料革は、1997年にドイツ、イタリア、フランス、イギリス、オランダおよびスペインのヨーロッパ諸国の鞣製工場および、製靴工場から収集した一般的な甲革である。すなわち、合計58点である。・・・
- 中小牛皮より製造された甲革:21点(銀面使用15点、肉面使用6点)
- 成牛皮より製造された甲革:25点(銀面使用20点、肉面使用5点)
- 山羊皮および緬羊皮より製造された甲革:12点
・・・甲革は、その約70%が成牛皮より製造され、他に、中小牛皮、山羊皮や緬羊皮等の小動物より製造されている。中牛皮(キップスキン)は生後6カ月から1才余りの皮であり、皮の大きさや品質は小牛皮と成牛皮の中間に位置する。小牛皮(カーフスキン)は生後6カ月以内の子牛の皮であり、銀面は平滑できめが細かく、牛革では最高級の革である。
銀面の品質により、そのまま塗装仕上げをする銀付甲革と、バフィング処理(革の表面をバフィングペーパーで除去)により銀面のわずかな傷やすれ等を修正した後、塗装を行う銀磨り甲革に分けられる。カーフ、キップ等の高級品質の甲革は主として銀付革であるが、肉面を毛羽立たせてスエードにしているものもある。また、成牛皮等の大きな動物の肉面を毛羽立たせたものは、毛足が太くて長いため、ベロアとして用いられている。
本調査で収集した靴用甲革の仕上げは、アニリン仕上げ、セミアニリン仕上げ、グレージング仕上げ、ボックス仕上げ、樹脂仕上げである。以下に各仕上げ方法について述べる。
- 1) アニリン仕上げ
- 染色した革に顔料を含まないか、又はごく少量を含み、染料とタンパク質系バインダーを主体とした仕上げ液を用いる。透明感のある塗膜のため、革本来の銀面の特徴が生かされている。
- 2) セミアニリン仕上げ
- 染色した革に染料を主体とし、少量の顔料を加えた塗料を用いたもの。アニリン仕上げと顔料仕上げの中間的な仕上げ方法。
- 3) グレージング仕上げ
- 塗膜の表面にめのう、ガラス等のローラにより圧力を加えながら摩擦し、革の表面に平滑性と光沢を与える。
- 4) ボックス仕上げ
- グレージングを施した後、ネックからバットへ、べリーからベリーへ、2方向にしぼ付けを行い、銀面に美しい四角のしぼをつける。
- 5) 樹脂仕上げ
- 合成樹脂をベースとして顔料、染料、バインダー等の塗料を使用するため、銀面の傷を修正するのに適している。
ヨーロッパで製造された靴用甲革の性状 (1) (PDF)
成牛皮より製造された銀面使用の甲革は仕上げ方法により一般靴用甲革、靴用ソフト革(ソフト革は薄手の柔軟な革の総称)、靴用ナッパ革(ナッパ革は羊皮、山羊皮から手袋や衣料用に仕上げた銀付革をさすが、現在は牛皮、豚皮から柔軟な仕上げを施したクロム鞣し銀付革も含まれる。)および銀磨り甲革(革の銀面のわずかな傷やすれ等をバフィングペーパーで除去した後、樹脂仕上げを行ったもの。)に分けられる。ヨーロッパで製造された靴用甲革の性状 (2) (PDF)
(1) JIS規格
- 耐水度(JISK6550)
- 銀面から肉面に水が漏れるまでの時間
- 透湿度(JISK6549)
- 革を境界面として、一方の側の空気を相対湿度80±5%に、反対側の空気を乾燥状態して通過する水蒸気の量
(2) 銀面使用の中小牛皮(カーフ、キップ)の耐水度と透湿度
耐水度は、フランス、イタリアが低く、ドイツ、イギリス、オランダは高かった。フランス、イタリアの耐水度が低いのはアニリン仕上げのためと考えられる。
ヨーロッパで製造された靴用甲革の性状 (1) (PDF)
(3) 銀面使用の成牛皮(ステア)の耐水度と透湿度
試料革 No.16~20 が、ガラス張り革に相当しますが、
- No.17:水がかなり染み込みにくい(耐水度 12時間)、通気性が良い(透湿度 9.3[㎎/㎠/hr])
- No.18:水がかなり染み込みやすい(耐水度 58分)、通気性がやや悪い(透湿度 7.8[㎎/㎠/hr])
- No.19:水が染み込みにくい(耐水度 7時間)、通気性がかなり良い(透湿度 10.6[㎎/㎠/hr])
銀磨り甲革は、バフィング処理の後、高濃度の顔料やワックスを含む樹脂塗料を用いて樹脂仕上げをするため、耐水度は58分~12時間と高かった。一方、透湿度は、他の銀面使用の甲革と比較すると低いものも認められることから、これらは靴着用時の快適性に影響を与えるものと考えられる。
ヨーロッパで製造された靴用甲革の性状 (2) (PDF)
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