(2) 手入れ用品
(2-1) Scarpa
(2-2) Russell Moccasin
(2-3) Red Wing
(2-4) Obenauf's
(2-5) Aquaseal
(3) シリコーンは革に有害なのかどうか
(3-1) シリコーンオイルは通気性がない？ある？、どちらがホントの話だ、的な
(3-2) シリコーンオイルは革を乾燥させるので、革にはシリコーンオイルを塗らないほうがいい、という話
(1) 世界初のシリコーンレザーとそれを使ったブーツ
Sylflex®（Silicone Tanned Leather）
Sylflex, Silicone Tanned Leather | Chem. Eng. News, 1955, 33 (11), pp 1132–1133
靴メーカー数社が、永久防水であり、屈曲状態で水を通さない革（履き皺から浸水しないという意味か？）を使った靴を今春（1955年）製造する。この革の新概念の登場は、柔軟性と通気性を保ちつつ防水性を上げるためのダウコーニング社のシリコーン製品である Sylflex で、靴用甲革を鞣した賜物だ。
ゴルフシューメーカーの Charles. A. Eaton 社と Endicott Johnson 社が Sylflex を使った靴を製造し、ほぼこれと同じくして、Montgomery Ward 社が、Sylflex を使った Endicott Johnson 製ブーツを通信販売する予定だ。
Sylflex はダウコーニング社の W. T. Rossiter 氏による長年にわたる研究の成果である。Rossiter 氏によると、Sylflex は「同じく新商品である Sylmer（布地用のシリコーン製品）とほぼ同じ効果を革にもたらす」。今日、市場には、防水レザーと呼ばれているものがあるが、・・・（続きは有料）
革の肌当たり、感触を調整する工程です。 オイルエマルジョンを使って、革の中にオイルを浸透させ、柔軟さと強靭さを持たせます。
- ケミカル系オイルエマルジョン
オイルの量を多くすると、柔らかく仕上がる反面、重く、粘りを感じるようになります。オイルの量が少ないと、軽くサラサラに仕上がる反面、パサついた硬さがでるため、タンニン系レタンの革では、裂け易くなります。- シリコーン系オイルエマルジョン
柔軟でサラサラと軽い感触になる。扱いやすいが、染色や仕上に高い技術を要するようになるため、万能ではありません。- フッ素系オイルエマルジョン
防水革を作る際に使用します。革の基本特性である透湿性は保持されます。レタンニングと加脂の組み合わせで、革の質感の殆どが決定します。組み合わせの効果は単純では無いので、革の使用目的、使用環境、質感等、充分な打合せをしたうえで当社の技術者が処方の調整を行います。
Q. 革製品に白い粉状のもの、あるいは白いカビ状のものが吹き出してくることがありますが、これは何でしょう。
A. ・・・脂肪スピューは、衣料革に多く発生しています。固形パラフィン、固形シリコンや高級脂肪酸など高融点の脂肪を含有する加脂剤を使用した場合や、原皮中に含まれる脂肪の除去が不十分な場合に発生しやすい。通常、加脂剤によるスピューは革全面に、体脂肪によるスピューは動物の背線周囲に偏在しやすいのが特徴です。脂肪スピューも完全に防ぐことは困難です。
Endicott Johnson ・・・ Soft, tan Sylflex Vulcanized upper leather
Dunham ・・・ Sylflex® tanned waterproof breathable leather
(2) 手入れ用品
(2-1) Scarpa
Scarpa社のHS12クリーム
HS12トリートメント
HS(ハイドロ・ストップ)12はスカルパ社独自の撥水加工です。革のなめし工程でシリコンを革に深く浸透させることにより、撥水性、透湿性、水濡れしたときの速乾性を飛躍的に高めると共に、革の寿命を延ばします。
※ HS12クリームに保革成分は含まれません。
HS12 Cream
Scarpa Hydro-stop cream, is a silicone based cream, of our secret formula!, to provide your leather boots with the best water-resistance available. Applied to dry leather after use, the cream not only enhances performance, but provides your boots, with nourishment to ensure best service.
Use- Waterproofing treatment for most calf leathers, Sherpa leathers, Anfibio leathers, and oiled Nubuck leathers.
Scarpa社は Nikwax も薦めている。
SHERPA LEATHERS- example - SL
A 2,7 mm - 2,9 mm tanned leather. The extra thickness and durability of this leather is perfectly suited to stronger hill and mountain walking boots, where extra support and resistance to scuffing and stops the leather from wetting out so easily. We recommend the use of SCARPA HS12 cream or Aqueous Nikwax from new. This will not soak into the leathers immediately due to the high silicone content retained on the surface of the leather during the HS12 tanning process. It will however begin to soak in over time as boots become scuffed with use.
質問 ; NIKWAXの防水製品は何系の防水剤ですか？
答え ; EVA樹脂（エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂）を主成分としております。一度布地等に塗布し空気に触れ乾燥いたしますと、強力な防水皮膜を形成し水はもちろん薬品などもはじいてしまいます。
(2-2) Russell Moccasin
ラッセル的には、シリコーンレザーであるウェザータフに、Pecard のオイルは NG だけど Obenauf のオイルは OK。理由は不明(笑)
Russell Leathers | Russell Moccasin
Leather Care | Russell Moccasin
・・・We recommend it for all smooth leathers, including oil tanned, silicone tanned and French Veals.・・・
(2-3) Red Wing
distressed pull up leather のラフ&タフに Silicone Waterproofing （リキッドかスプレーかは不明）を使ったところ↓。
RW の Silicone Waterproofing は Pecard 製。
注意：オイルタンドレザーにはシリコーンドレッシングを決して塗らないこと
- ドライタンドレザーの靴のみに使うこと
- きれいな水のみで靴を洗い、完全に乾かすこと
- アッパーと縫い目にたっぷり塗ること
- 室温で乾燥させたあと、もう一度塗ること
- 靴が新品の場合は、さらにもう一度塗るのが望ましい
スプレーのMSDS。溶剤がたっぷり入ってるし、RW9111 が色落ちしたのも、むべなるかな。
成分
NOTE：*印は、緊急対処計画及び地域住民の知る権利法で指定された有害物質
- ブタン
- プロパン
- *1,1,1-トリクロロエタン（40～70%）
- ミネラルスピリット
- シリコーン樹脂
- *キシレン（2%以下）
(2-4) Obenauf's
溶剤不使用の水溶性シリコーンスプレー。ホワイツネームはディスコンらしい。
WHITE'S BOOTS Silicorn Water Repellant | MIRROR BALL
Obenauf's Watershield | Obenauf's Leather Care
特徴：水溶性シリコーン、保革効果なし、有害な化学物質不使用、シリコーン含有率16%以上！
環境への配慮から、溶剤を使わず、水で希釈して使用できるエマルジョンタイプの製品へのニーズが高まっています。・・・
コードバンを含む、どんな革にも使えるオールデンの防水スプレーも Obenauf 製っぽいけど、どうかな？
ボトルの裏書きは「水溶性で、環境に無害」。
Here's what it says on the bottle:
"Use Alden Leather Defender to clean and protect calfskin and genuine shell cordovan Alden shoes. Not for use on Suede or Nubuck."
"Directions: Apply Alden Leather Defender to a soft cloth and wipe shoes thoroughly. Let dry. Turn cloth and buff gently. For best results allow leather to dry completely before wearing shoes."
"Safety: Alden Leather Defender is water-based and environmentally benign. Do not take internally. If accidentally ingested, please call physician immediately. "
"Made in USA."
(2-5) Aquaseal
ここまで紹介してきたシリコーンドレッシングには保革成分が入っていないのですが、Aquaseal は保革成分入り。
・・・the active waterproofing agent of Aquaseal® ・・・ High density silicone oil.Aquaseal の防水剤は高濃度のシリコーンオイル。
・・・While silicone is an effective waterproofing agent it is not a particularly good leather conditioner. Aquaseal® ・・・ effectively combines silicone with an highly effective leather conditioning agent・・・
シリコーンオイルは効果的な防水剤ではあるが、特に優れたレザーコンディショナーではない。Aquaseal はシリコーンオイルと非常に効果的な保革剤を混ぜている。
・・・Both products are made of the same ingredients, but formulated differently. ・・・ The crème contains more wax, ・・・ whereas the liquid has more conditioning oil and silicone oil.・・・
ペーストとリキッドは同じ成分でできているが、配合比率が異なる。ペーストにはワックスが多めに入っており、リキッドにはコンディショニングオイルとシリコーンオイルが多めに入っている。
Leather Conditing, Waterproofing, Cleaning FAQ's | Aquaseal
(3) シリコーンは革に有害なのかどうか
(3-1) シリコーンオイルは通気性がない？ある？、どちらがホントの話だ、的な
シリコーンオイルは通気性がない派
・・・従来、靴の防水というのは表面にロウや油あるいは、シリコンオイルを塗って、水に濡れても染み込まないようにガードを作ることでした。ガラス革（塗料で仕上げてある厚手の革）もそうです。しかし、皮革の表面にベールをつくりますので通気性に欠けることが最大の欠点でした。・・・
シリコーンオイルは通気性がある派
Q シリコーン皮膜は水を撥くが、湿気は透すと聞きました。ちょっと矛盾していませんか？
A 一見そのように見えますが、実は、同じ化学組成をもっていても、水と水蒸気では物理的性質がまったく異なります。ここにその秘密があるのです。
よくある質問集 - 撥水性と透湿性 | モメンティブ･パフォーマンス･マテリアルズ
Does Aquaseal® allow the leather to breathe?
Yes, ・・・it readily soaks in and coats each leather fiber with silicone. The pores remain open for breathability.・・・Aquaseal は革を呼吸させますか？
はい。・・・Aquaseal は革に染み込んで、繊維をシリコーンオイルで覆います。繊維と繊維の間隙は空いたままなので、通気性はあります。・・・
結局のところ、樹脂やオイルや蝋といった付着物が多いほど通気性が悪くなるという、程度の問題ではないか？ （→追記 シリコーンの透湿度）
・・・シリコン樹脂でフッソ樹脂と同じ撥水効果を得るには数倍の量が必要となり、皮革においてはシミムラの原因となる可能性があります。・・・
製品概要 | 「フッ素系撥水撥油剤」の特徴 | AsahiGuard E-SERIES
フッ素系撥水撥油剤の γc は 10、シリコーン系撥水剤の γc は 30、水の γL は 70。γc が小さいほど、水は弾く。
(3-2) シリコーンオイルは革を乾燥させるので、革にはシリコーンオイルを塗らないほうがいい、という話
シリコン（シリコンオイル）
「塗るだけで光る」とされている類似品には、光沢を出すと同時に、革をべたつかせない目的で配合されています。しかしながら、その目的と引き換えに揮発性も生じ、多用することで、革を乾燥させ、ひび割れの原因ともなります。
タラゴの靴クリーム・リキッドはシリコンを使用せず、カルナバワックスやビーズワックスなどの天然成分を重視することで、スムースレザーに乳化性靴クリームと同等のしっとりと落ち着いた輝きを演出します。【楽天市場】靴磨き・靴クリームtarrago（タラゴ）セルフシャインクリーム | SAPHIR japon Prime Avenue
シリコーンオイルは革に栄養を与える訳ではないものの、光沢が出てしまう効果以上に伸びを改善し革の表面をベタつかせない目的で、この種の多くの類似品に添加されるのですが、その目的と引き換えに揮発性も生じます。よってこれまでの「塗るだけで光る」系をお手入れで入れ替えることなく多用すると、時にシリコーンオイルの副作用が効果より勝り、革を必要以上に乾燥させてしまう一方で他の成分がその表面を封印状態にするのも作用し、最終的に革が言わば呼吸困難に陥りヒビ割れてしまうケースが多いのです。
2/3 速報！ スペインから上陸、タラゴのシューケア用品 [靴] All About
・・・ in the case of so-called dry-tanned leather, some manufacturers recommend only silicone products for the protection of the boot. What both consumers and even manufacturers don't often realize is that silicone, while it will provide some initial short-term resistance to water, won't do a thing to condition the leather. In fact, many leather-crafters feel that silicone will actually dry out the leather ・・・いわゆるドライタンドレザーの場合、シリコーンドレッシングだけで手入れすることを薦めているブーツメーカーがある。シリコーンは防水するが、革のコンディショニングには役立たないということを、消費者とブーツメーカーでさえ気づいていないことがよくある。レザークラフトをする人の多くは、実のところ、シリコーンは革を乾燥させると感じている。
この話↑は本当なのかなあ？ シリコーンオイルには色々あるし、揮発性も色々。シリコーン樹脂を溶かすために溶剤をたっぷり入れている Pecard のような商品の使用感（上掲のRed Wing 9111）によって、シリコーンオイルの都市伝説ができたのではないかなあ？
Will silicone hurt the stitching of leather footwear?No. Silicone and leather are very compatible. However, a number of years ago a few popular silicone "polymer" products had in their formula a solvent which tended to soften the glue in some footwear. Eventually this strong solvent was identified as toxic to leather and people. The manufacturers of those products discontinued using the solvent. This solvent was never used in any Aquaseal® product.
シリコーンオイルは革靴の縫い糸を傷めますか？
いいえ。シリコーンオイルと革はとても相性が良い。しかし、ずいぶん昔にあった、シリコーン「樹脂」の人気商品には、靴の接着剤を溶かす溶剤が入っていた。最終的に、この強い溶剤は革と人に有害であると認定され、製造元は強い溶剤を使うのを止めた。このような溶剤は、 Aquaseal のどれにも入っていない。
Q なぜシリコーンを（化粧品に）使用するようになったのでしょうか？
A ・・・持ちのいい化粧料の開発にもシリコーンオイルは一役を担っています。化粧料を肌に塗布した後、肌上に油分が多く残っていると、いつまでもズルズルしておさまりが悪くなります。そこで登場したのが揮発性環状シリコーンオイルです。化粧料を塗布しているときは軽い油として働き、次第に揮発し、化粧がピタッとおさまって最終的に持ちのいい化粧料ができるようになりました。・・・
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