1:「ボックス」の語源は?
まずボックス(Box)の由来だけでも諸説あります。高級な革なので紙巻きではなく箱に詰めて納品したからとか、この革を多く製造していた業者が革の裏面に押していたスタンプの形状と言う説もあります。また2:とも絡みますが、銀面に施したシボの形状から来たとの話もあるほどです。ただ、靴的に見て比較的有力とされているのは、開発されて間もない19世紀後半にこの革を好んで使った、ロンドンの靴店ジョセフ・ボックス(Joseph Box)の名から来たと言う説です。因みにこの靴店はヴィクトリア女王時代の王室御用達靴店の一つで、1950年代に現在のそれであるジョン・ロブ(John Lobb)に吸収されています。
Handmade Shoes for Men
ORIGIN OF THE WORD "BOX-CALF" | The Leather manufacturer v. 33 (1922)
The Leather Trades Review, Londonに下掲の手紙が載った:
拝啓 最新号に載っていた、"Box Calf"という用語の由来に関する問い合わせの手紙にお答えします。
"box"という用語の由来を知っている者は本当にほとんどいないと思いますが、私は信頼できる回答ができると思います。
記事に書かれていた推測や情報筋の回答は、本当の意味や由来から掛け離れています。
市場に最初に出た"box"革とは、どこの国でも、"White's Box Calf"と記載され宣伝された革だった、というのが事実です。この革は米国のWhite & Co.が製造しました。
White氏はカーフと半裁革を数年間作っていましたが、新しい革を作りたいと望み、製革工としての実務を通して、革を"boarding"するアイデアを思いつきました。
ある日、二方向にボーディングしたところ、彼はその仕上がりに満足しただけでなく、大量生産し、製法を保護しようと決心しました。
彼は名前をどうしようかと途方に暮れていたのですが、帰宅した夜に、興奮気味に妻に革のサンプルを見せたところ、「何て美しいの! 小さいボックスがたくさんあるように見える!」と彼女は叫びました。彼の問題は解決し、"Box"という名を付ける決心を直ちにしました。こういう経緯で、今や世界で有名な用語になりました。
White氏は亡くなって随分経ちます。この情報提供者は米国のCharles Grammar氏で、彼はOhio Leather社の所長でしたが、"box"という用語の発案当時は、発案者であるWhite氏の会社で働いていました。
敬具 皮革輸入会社 F. J. Walker & Co., LondonのPERCY HAGONより
Hide and Leatherによる付言:
Edward L. Whiteは"Box Calf"の発案者で、マサチューセッツ州ローエルにあったWhite & Co.(後にAmerican Hide and Leather Co.に合併された)というタンナーの経営者でした。"Ed" Whiteが亡くなったなんてとんでもない。健在です。今はニューヨーク州リトル・フォールズにあるBarnet Leather Co.という大企業で現場監督をしています。何年も前の話ですが、私の記憶が正しければ、White氏に会いにローエルに行ったときにこんな話をしてくれました。新作の革の名前を考えていたときに、とても賢明なことに、妻に相談した、と。White夫人はロンドンのBoxという名の靴屋で靴を買ったことを思い出し、その靴はとても良かったので品質を覚えており、"Box"は響きが良いのではと提案したところ、賢く進取的で、高級カーフ製造の名人であった夫は直ちにそれを採用しました。インスピレーションでした。新作の革が名声を得ると、とても多くのタンナーが彼の革を模倣し、同じ名前を使いました。法的な警告と抗議を短期間しましたが効果無く、"Box"という用語は、"Box"グレインという名でよく知られたシボを持つ全てのライトウェイトの革に一般的に使われるようになりました。
Charles Grammarに関して。彼はEd Whiteの従兄弟であり、随分前に亡くなりました。White & Co.のボストン事務所の所長でした。その後、ライトウェイトの甲革の大企業に成長したOhio Leather Co.のボストン事務所の所長になりました。
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