2014/08/11

ヨーロッパの原皮事情

8/11/2014

(1) オランダ

 去る2月14日に日本皮革産業連合会会長、(株)リーガルコーボレーション社長の岩崎幸次郎氏に、栗原茂当協会副会長が、業界の現況等について、お伺いした。

栗原
 皮革産業界を取り巻く環境が厳しくなっていますが、円安について、4月からの消費税値上げ、そして原皮の高騰について等、お伺いいたします。
 繊研新聞の岩崎氏のインタビュー記事によりますと米国の原皮が50%、欧州の原皮が100%上昇していると掲載されていましたが?

岩崎
 これはリーガル社の場合としてですが、特にドレスシューズに使っているキップペースの原皮でオランダからの革は一年半前には1頭が約1万円だったものが現在は倍の2万円になり、さらにその金額を出しても品薄で入ってこない状況になっています。定期発注しているので入荷が無い訳ではないが、入荷が半月から1ヶ月ほど遅れることもあるのです。
 また、現在の価格で安定するのかについても先行きは不確定で、北米からのステアも異常気象での牛の低温死や屠殺の減少などで供給量の不足が起き、50%も高騰しています。さらに、中国の買い付け量が落ち込まず、先行きは原皮が下がることはない状況です。これに為替が円安に進むとさらに厳しくなるでしょう。
 また、底材などの合成ゴムは原料のナフサが1年で30%の値上げになっているので、こちらも下がる要素はない状況です。・・・

・・・世界の屠殺量は南半球で増え、北半球で減少しているが、総数はあまり変化していません。・・・

・・・ヨーロッパではラグジュアリーブランドが、タンナーを買い取る動きも出てきました。良い素材の争奪戦ともいえる流れが起こっています。皮は食用にした副産物を利用するため量が限られ、世界的な健康志向の動きからも量が増えることは期待できない状況です。・・・

東靴新聞3月号(平成26年) | 東靴協会


(2) フランス、イギリス、アイルランド、スウェーデン、ポーランド、フィンランド

Weaker raw materials market in Europe | International Leather Maker

 ヨーロッパの原皮市場の全般的な動向は今、明らかに値下がりしています。フランス、イギリス、アイルランド、スウェーデン、ポーランド、フィンランドで、原皮価格の低下を現在、目の当たりにしているところです。・・・

 事実はこうです。ヨーロッパでは、大手の食肉企業、高級ブランド、自動車メーカーの間で、大量の原皮を確保するために3ヶ月以上の長期契約をしています。この契約によって、自由取引分の原皮価格が高騰しないのでしょう。ライオン達は食事を済ませ、ライオン以外は残り物を争奪しているのかもしれません。

※ 分かりにくい文章ですが、良い原皮は相応の高値で直接取引されて市場に出ず、残り物による市場価格が落ちている、ということのようです。

(3) 上質な革になるフランス産原皮はたった10%

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Currently, only 10% of skins bought from French farmers can be transformed into quality leather. The raw material is becoming too scarce to meet the strong development of the international market.

5 Comments:

べじたん さんのコメント...

ありがとうございます。
寒い地域の方が原皮の質が良い(繊維密度が高い)と言われますが、ヨーロッパは米国より良かったですか?

みき さんのコメント...

お客様の好みによります。
一般的に、寒い地方の牛のほうが、皮は分厚くなりがちで、
繊維密度も高くなります。
勿論、牛の品種にもよりますが。
ただし、ヨーロッパでは雄牛が去勢されずに育てられる事が多い為、シワが高くて毛穴も大きく、革も固くなりがちです。
成人男性と、女性ホルモンを注射しているオカマさんとの違いみたいなものです。
日本のお客様がそれを好まれれば良いのですが、決してそうとも限りません。
アルプス周辺の牛は、我々が一般的に使っている牛とは全く異なり、誰が鞣しても上等な革になるんじゃ無いかって位、産地や品種によって原皮の性格は異なります。
とは言え、生産数に限りが有るため、手に入れることも難しく、より便利で中性的な米国産に偏っています。

べじたん さんのコメント...

大変面白い話をありがとうございました。

みき さんのコメント...

さて、その原皮価格も、先月あたりから状況が変わってきております。
元々原皮相場は、圧倒的な購買量の中国によって左右されるのですが、どうも契約残の引取を渋り始めた様で。
去年の10月頃には110ドルまで上昇していた物も、今週は60ドル台まで下がっているなど、先行きは不透明です。
只、上海株式の乱高下は、中国公安の言うところの「先物取引による不正な相場操縦で株式市場の急落」だけでは無さそうな気がします。

べじたん さんのコメント...

情報ありがとうございます。びっくりしました! 6月までのデータは見れましたが、暴落中なんですね。値上げしたタンナー、卸、小売店は、半年後くらいには値下げするでしょうか?
[url]http://www.indexmundi.com/commodities/?commodity=hides&months=60[/url]
[image]http://livedoor.blogimg.jp/veg_tan/imgs/0/7/07fa8663.jpg[/image]